日本酒を飲んだり選んだりしている中で、山田錦・五百万石・雄町といった名前を目にすることと思います。
今回は、この酒米について。
酒米とは?
日本酒はお米からつくられていることはご承知のとおり。日本酒づくりのために作られたお米「酒造好適米」が “酒米” です。
コシヒカリやササニシキなど、ふだん私たちが食べているお米も日本酒づくりに使われることがありますが、酒米としてよく使われているお米は、いわゆる飯米とは少し特徴が異なります。
◾️酒米の特徴とは?
- 粒が大きく、「心白」と呼ばれる部分が大きい
- デンプン質の含有量が多い
- 吸水力が高い
- 砕けず精米しやすい
ご飯用のお米との違い・お酒づくりに適したお米の特徴はいくつかありますが、なかでも、「粒が大きく、心白と呼ばれる部分が大きい」ことは一番の特徴です。
◾️酒米は、粒が大きく、「心白」と呼ばれる部分が大きい!
酒米は、ふつうのご飯用のお米よりも粒が大きくて柔らかく、お米の中心にある「心白」と呼ばれる部分が大きいことが大きな特徴です。
「心白」の部分は、柔らかく、デンプンが多く含まれていて、麹づくりの要となる部分です。お酒は、この「心白」の部分を磨き出してつくります。
「心白」のまわりのお米の外側部分にはタンパク質や資質・ビタミンなどが含まれていて、これらは雑味の元となってしまうため、まわりから削り取り、アルコール発酵に必要な糖分となるデンプン質の高い部分を磨き出します。
この磨き出すときの割合が「精米歩合」。精米歩合40%などといっているのは、お米の60%を削り、磨き出したあとの残りの40%を使っているということになります。
(この精米歩合によりお酒の種類も分けられていて、吟醸酒であれば精米歩合は60%以下、大吟醸酒であれば50%以下、と決められています。ちなみに、普段ご飯として食べているお米の精米歩合は90%程度です)
ご飯として食べる場合には旨味や栄養になるのに、お酒づくりでは邪魔になって削られてしまうのはちょっと残念な感じですが、磨き出されたお米は小さな白い粒に生まれ変わります。
精米歩合50%くらいになると、本当にきれいな丸い粒になり、このきれいな粒たちがお酒になっていくのだと思うと不思議な気持ちにもなります。
全国の酒米
冒頭に名前を挙げた「山田錦」「五百万石」「雄町」をはじめ、「美山錦」「八反錦」などは、酒米の代表格といえる品種です。
山田錦は兵庫県生まれ、五百万石は新潟県生まれですが、優れた酒造好適米として、誕生した県にとどまらず全国各地で栽培されています。
一方、近年は、酒造好適米の開発も各地で積極的に進められ、新しい酒米もどんどん誕生しています。また逆に、栽培されなくなっていた品種を復活させる動きなどもあります。
◾️各県の酒米、どんなものがある?
酒米の種類は、食用のお米と同じくらい本当にたくさんの種類があります! 各地で新しい酒米の開発も進められており、ここ数年の間にもどんどん品種が増えています。
名前も、土地にちなんだもの・きれいな響きのもの・お酒らしいもの、いろいろで、それも楽しめます。
- 北海道:「吟風」「彗星」「きたしずく」
- 青森県:「華吹雪」「華想い」「豊盃」「吟烏帽子」
- 岩手県:「吟ぎんが」「結の香」
- 秋田県:「秋田酒こまち」「美郷錦」「一穂積」「百田(ひゃくでん)」
- 宮城県:「蔵の華」「吟のいろは」
- 山形県:「亀の尾」「出羽燦々」「出羽の里」「豊国」「雪女神」
- 福島県:「夢の香」「福、笑い」「福乃香」
- 茨城県:「ひたち錦」
- 栃木県:「とちぎ酒14」「夢ささら」
- 群馬県:「舞風」
- 埼玉県:「さけ武蔵」
- 千葉県:「総の舞」
- 新潟県:「越淡麗」「五百万石」
- 長野県:「ひとごこち」「美山錦」「金紋錦」「山恵錦」
- 富山県:「富の香」「雄山錦」
- 石川県:「石川門」「百万石乃白」
- 福井県:「越の雫」「九頭竜」「さかほまれ」
- 静岡県:「誉富士」
- 愛知県:「夢山水」「夢吟香(ゆめぎんが)」
- 岐阜県:「ひだほまれ」「ひだみのり」
- 滋賀県:「吟吹雪」「滋賀渡船6号」
- 京都府:「祝」
- 三重県:「神の穂」
- 奈良県:「露葉風」
- 兵庫県:「山田錦」「愛山」「但馬強力」「兵庫夢錦」
- 鳥取県:「強力」
- 岡山県:「雄町」
- 広島県:「八反錦」「八反35号」「こいおまち」「千本錦」
- 島根県:「佐香錦」「神の舞(かんのまい)」「縁の舞(えにしのまい)」
- 山口県:「穀良都(こくりょうみやこ)」「西都の雫」
- 香川県:「さぬきよいまい」「オオセト」
- 愛媛県:「松山三井(まつやまみい)」「しずく媛」
- 高知県:「土佐錦」「吟の夢」「風鳴子」「土佐麗(とさうらら)」
- 福岡県:「夢一献」「吟のさと」「壽限無」
- 佐賀県:「さがの華」
- 大分県:「大分三井(おおいたみい)」
- 熊本県:「神力(しんりき)」「華錦」
- 宮崎県:「はなかぐら」
などなど!(ご紹介しているのは各県の酒造好適米の一部です)
それにしても、酒米の誕生の系譜をみると、いくつもの酒米で山田錦が掛け合わせで使われていて(競走馬の血統のような系譜があって、山田錦は父母・祖父母の代にも登場するなど多数)、山田錦の王様ぶりを再認識。
また、ここ2〜3年の間にも新しい酒米がいくつも誕生しているのですが、新しい酒米の開発には10年以上もの歳月がかけられていて、まさに酒米をつくるところから、酒づくりへの強い情熱が込められているのだと感じさせられます。
◾️“土地”に根ざしたお酒づくりの動き
新しい酒米の開発や半世紀以上も前に栽培されなくなった酒米の復活など、酒米を取り巻く環境はとても活発なようです。
地産地消の広がりや「お酒の地理的表示(GI)(※)」の動きなどにも伴って、ワインで言われる ”テロワール” の考え方が日本酒でも強くなり、“オール○○地域の日本酒”、生産地特有の特徴・個性をもったお酒をつくろうという動きが盛んになってきていることが背景にあります。
新しい酒米をつかった新しいお酒へのチャレンジ。地域にこだわった、個性のある新しいお酒も、これからますます日本酒の楽しみになりそうです。
(※)お酒の地理的表示(GI:Geographical Indication)(国税庁サイト)
・お酒の地理的表示(GI)を知っていますか?(パンフレットPDF)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sake/03.pdf
・酒類の地理的表示マップ(令和2年3月末時点)
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/chiri/map.htm
(現在、清酒として指定されている4地域のうち、はりまでは、原料米をさらに兵庫県で収穫した山田錦に限定)
新しい酒米の日本酒もたくさんデビュー
コロナ禍で飲みに行く機会も制限され、おうち飲みが多くなっている2020〜21年。そんな中でも、新しい酒米でつくられたお酒がたくさんデビューしています。
たとえば、2017年以降に新しく品種登録された酒米は、先ほど挙げた中になんと12品種もあります。(「吟烏帽子」「一穂積」「百田」「吟のいろは」「福、笑い」「福乃香」「夢ささら」「山恵錦」「百万石乃白」「さかほまれ」「縁の舞」「土佐麗」)
なかでも、「一穂積」「百田」「吟のいろは」「福、笑い」「福乃香」「山恵錦」「百万石乃白」は、2019〜20年に登録されたばかりで、去年日本酒デビューしたばかりのものや、日本酒デビューはいよいよ今年から!というものもあるのです。
コロナ禍ですっきりしない毎日が続いていますが、こんな中でもこんな風に新しいお酒が誕生していることを思うと、元気をもらえる気持ちになります。
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酒米によって、どんな風に味や香りに違いがでるのでしょうか?
気になる名前の酒米から選んでみたり、新旧の酒米で飲み比べ!など、たまには “酒米” からお酒を楽しんでみるのも面白いのではないでしょうか?
いつも楽しくWakuWakuを忘れずに。
そんな時間のお供をしてくれるお酒にも感謝して、今晩もカンパイ!!