7月に入り、一年も後半戦に突入。日本酒の世界では新年度をむかえました。
梅雨というよりも強い雨が続いていて、七夕は今年もすっきりしない天気のようです。
願いごとを書いた短冊を笹の葉に飾る七夕祭り。そういえば、お酒のことを “ささ” とも読むなあと思い出しました。
今回は、そんなお酒の呼び方・名前についてです。
酒(ささ)は、中国の呼び方 “竹葉” から
“ささ” とも読む「お酒」。
インターネットの辞書によれば、『《女房詞(*1)から。中国で酒を竹葉といったことからとも、「さけ」の「さ」を重ねたものともいう》 酒のこと。』とあります。
さけの “さ” を重ねただけの呼び方と思っていましたが、意外や意外、竹の葉に由来する説もあったとは驚きです。
中国でお酒を “竹葉” といったことについては諸説あり、竹の葉の露が溜まったものがお酒となったことに因んでいるとも、漢朝にいた劉石という者の故事(*2)に由来するとも言われているようです。
(*1) 女房詞:にょうぼうことば。昔、宮中の女房が使っていた言葉。現在でも一般的に使われている言葉もある。おかず、おいしい、しゃもじ、などなど。(*2) 劉石の故事:継母に虐げられていた劉石が木の股に捨てておいた残飯がいつしか香ばしく香り、これに竹葉で覆いをしてお酒を造って国王に奉納したところ褒美を賜ったという故事。
さて、笹の葉さらさら…と歌われる七夕は、ご存知のとおり、桃の節句や端午の節句などと同様に節句の1つで、無病息災や豊作、子孫繁栄などを願う季節の節目の行事となっています。
(1月7日の人日(七草の節句)、3月3日の上巳(桃の節句)、5月5日の端午(菖蒲の節句)、7月7日の七夕、9月9日の重陽(菊の節句)の5つが五節句といわれています)
お酒との関係では、桃の節句では「白酒」を、端午の節句では「菖蒲酒」、重陽では「菊酒」をいただく風習がありますが、残念ながら七夕には特に風習とされているお酒はないようです。夏の暑い時期、流通や保存状態などの問題があったのかもしれません。
しかし、現在は、この七夕の時期に出されるお酒もあります。また、6月から8月にかけては、酒蔵さんでは「初呑み切り」の時期でもあります。
「呑み切り」とは、お酒を貯蔵しているタンクの「呑み(注ぎ口)」を開けて(切って)、お酒の味わいや熟成度合いなど、新酒の出来や品質の状態をタンクごとに確認し、飲み頃の時期をはかる重要な行事です。その年初めての呑み切りを「初呑み切り」といい、この時期に行われます。
ここで評価の高かったお酒を限定出荷する酒蔵さんもあるようです。新酒に比べて少し熟成した味わいを楽しめるそうです。(それもまた格別そうですね!)
短冊の飾られた笹の葉を眺めながら、あるいは、竹筒でお酒をいただたりと、いつもとちょっと違う “ささ(酒)” を楽しむもよし、縁起のよさそうな?初呑み切りのお酒を楽しむもよし。7月ならではのお酒の楽しみ方ではないでしょうか。
正宗は、じつは “清酒”
呼び方ではなく名前については、どうでしょか。
日本酒には、「正宗」のつくお酒、多いですよね。
〇〇マサムネ、△△マサムネ、・・・。なんと全国で100銘柄以上もあるとか。
以前、酒蔵を見学した際に、「 “正宗” は、音読みのセイシュ(清酒)からきているといわれている」と伺ったことがありました。
そんなダジャレのような付け方で広まっていくこともあるのかと少し驚きましたが、昔も今も語呂合わせ・ゲン担ぎはよくされてきたこと。ある意味、納得でもあります。
マサムネの元祖といわれるのは、寛永2年(1625年)創醸、櫻正宗株式会社(神戸市東灘)の櫻正宗。
六代目の山邑太左衛門がつけた名前で、当時、醸造法の改良とともに酒銘の検討をしていたところ、「臨済正宗」と書かれた経巻を見て、正宗(セイシュウ)が「清酒」と語音が相通じることから「正宗」を酒銘とし、それが評判を呼び清酒の酒銘に使われるようになったとのこと。
櫻正宗株式会社:酒蔵の軌跡
https://www.sakuramasamune.co.jp/history/
“セイシュウ” ではなく “マサムネ” として広まった酒銘ですが、鎌倉末期の刀工・正宗とも同じ名で、切れ味鋭い刀のイメージとも相まって、「男酒」と呼ばれる灘の酒にはむしろピッタリの名前だったのではないでしょうか。
お酒の呼び方や名前にも意外な由来があり、そんな中にも日本酒の歴史を感じます。
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今年の七夕も残念な天気のようですが、願いごとに思いなど馳せながら、夕べのひとときを楽しんではいかがでしょうか。
いつも楽しくWakuWakuを忘れずに。
そんな時間のお供をしてくれるお酒にも感謝して、今晩もカンパイ!!